4月に迫った第一生命保険相互会社の株式会社化・IPO(新規上場)を前に、大型上場候補がもう1つ出現。2010年度に株式上場する方針を固めたとされる、大塚ホールディングス(HD)だ。大塚製薬や大塚食品を傘下に持つ持ち株会社で、清涼飲料「ポカリスエット」などを手掛ける有名企業のIPOは、低迷するIPO市場のみならず、東京株式市場の活性化に大きく寄与しよう。また、大塚HD上場で連想されるのが、食料品から医薬品まで幅広い分野で事業展開する食薬兼業メーカー。この辺りも抑えておきたい。
主幹事・野村の思惑も
大塚HDの上場だが、会社側は「当社が発表したものではない。具体的な決定はなく、総務部でも把握していない」(大塚HD総務部)とのこと。ただ、「当然、上場自体は経営課題として検討したことはある」(同)という。今のところ出ている話をまとめると、6月の株主総会後に東京証券取引所(東証)に上場の本申請を計画、審査や東証の認可などを経て、早ければ今年12月ごろに上場する。上場時は公募増資と株式売り出しを行い、時価総額は1兆円規模の大型IPOとなる見通しだ。注目の主幹事証券は野村ホールディングス(8604)傘下の野村証券が務めることが有力だが、幹事ではUBS証券の名前も出ている。
大塚HDは、1921年に大塚武三郎氏が徳島県鳴門市で創立した現在の大塚製薬工場を発祥として、2008年7月に純粋持ち株会社として発足した。傘下に「ポカリスエット」「オロナミンC」や医薬品を手掛ける大塚製薬、「ボンカレー」や「クリスタルガイザー」の大塚食品、「チオビタドリンク」の大鵬薬品工業などを持つ。また、株式市場では、サントリーホールディングス、竹中工務店、YKKなどとともに一般知名度の高い非上場企業として知られている。
大塚HDは徳島県発祥とあって、地場の阿波銀行(8388)が大株主に顔を出している。発行済み株式総数の2・11%を保有しており、仮に時価総額が1兆円規模となると、公募増資による希薄化を考慮しても100億円以上の資産効果をもたらそう。
大塚HDの前3月期の売上高は9559億円(前期比3%増)。医薬品セクターでは武田薬品工業(4502)に次ぐ業界2位のアステラス製薬(4503)の9656億円に肉薄。第一三共(4568)やエーザイ(4523)を上回る。利益面では、経常利益が961億円(前期比23%減)、純利益は470億円(同24%減)。また、総資産は1兆2987億円、純資産は8638億円、自己資本比率は62・3%。
好業績、アジア関連、ディフェンシブと3拍子そろう
大塚HDの上場で連想が働くのが、食料品から医薬品まで幅広い分野で事業展開をしている食薬兼業メーカー。上場時の比較対象銘柄とみられる食薬兼業メーカーに対して、「相場を暖めたい」との思惑から野村証券の強気評価への観測も出てくるところ。実際、野村証券は高評価を連発しており、あながち思惑だけでとどまらない可能性もある。
好業績、アジア関連、ディフェンシブの側面を持つ食薬兼業メーカーは現在の相場の流れからも投資妙味が強まっているといえる。
まずは、ヤクルト本社(2267)。1月29日発表の今3月期の第3・四半期決算は、売上高が前年同期比3%減の2217億円、営業利益は同18%増の192億円、純利益は同36%増の129億円。通期予想は据え置いたが、上ブレ期待は十分で増額含みの展開といえよう。
「今回の決算で業績の方向性は9月中間決算時とあまり変わらない。為替の円高で海外売り上げが目減りしたが、国内の売り上げ構成が変化したことや一部の原材料費が下がったことなどで粗利益率が改善。営業利益では国内の経費削減が寄与した」(ヤクルト本社広報担当)という。
同社の強みは海外展開で、既に他社を圧倒する営業基盤を確立している点が特筆されよう。「海外展開はほとんどが乳酸菌飲料『ヤクルト』単品。当社は利益貢献を急がず、健康を訴求して地道に素地作りをしてきた。一般的なマーケティング手法では初期に大量の広告宣伝を打ち、後は売り上げが時間とともに右肩下がりとなる。一方の『ヤクルト』は最初に時間がかかるが、時間とともに販売が落ちることはほとんどない」(同)という。同社は海外市場で種まきを終了し、収穫期入りしていることが明らかだ。
「現在、販売が伸びているのはアジア地域。特にインドネシアと中国だ。理由はこれらの国は人口が多いことと経済が活況なこと、また、『ヤクルトレディ』が順調に増えているのもあろう」(同)という。
アナリストからの評価も総じて良好。大和証券(CM)は1日付で、投資判断を「2(強気)」から「1(買い)」に引き上げ、目標株価を3200円とした。野村証券でも1月29日付で投資判断を「2(中立)」から「1(強気)」、目標株価を2450円から3200円としている。
5日現在の信用売り残は88万株超、取組倍率は0・39倍と大幅売り長だ。
味の素(2802)は1日後場中に、今3月期の利益予想を上方修正。為替の影響により、売上高こそ1兆1800億円(前期比1%減)の従来予想を据え置いたものの、営業利益は従来予想から170億円引き上げ660億円(同62%増)、最終損益は50億円引き上げ150億円の黒字(前期は102億円の赤字)と大幅増額した。
「収益上ブレ要因は大きく2つある。1つはアミノ酸事業において、飼料用アミノ酸の販売単価が上向き、売り上げも上ブレた。低迷していた事業で改善傾向が見られた。もう1つは海外食品事業で、従来から好調に推移していたが、今回はさらに計画を上回った」(味の素広報部)という。
同社は海外売上高比率が32%(前期)と高いことから、グローバルで活躍する食料品メーカーの代表格として知られる。伊藤雅俊社長は日ごろから「海外食品事業が成長ドライバー」と口にしており、アジア、南米、アフリカなどへ積極展開を進める。将来的には「海外売上高比率を2016年度(17年3月期)に4割にまで高めたい。また、現在130カ国で展開している国や地域を150カ国にまで広げたい」(味の素広報部)という。
ここでも野村証券は、投資判断「1(強気)」を継続、目標株価を1100円から1200円に引き上げ、好意的な反応を示している。ほかで高い評価をしたのは大和証券CMで、投資判断を「3(中立)」から「2(強気)」、目標株価を1160円とした。
そこで期待感が増すのが、明治ホールディングス(2269)。10日引け後に今3月期の第3・四半期決算発表、好決算となった。
昨年11月12日に今3月期の業績予想を修正済み。売上高は従来予想の1兆1430億円から1兆1240億円(前期の明治製菓と明治乳業の単純合算は1兆1254億円)に減額となったが、営業利益では同250億円から260億円(同248億円)に引き上げた。利益増額は乳業部門で原材料価格下落が想定以上となったことなどからだが、慎重な見方は崩しておらず、再度の増額期待も残している。
明治HDは海外売上高比率が「7%程度」(明治ホールディングスIR広報担当)にすぎず、先行する味の素(32%)やヤクルト本社(28%)に比べ、海外展開で遅れている。「(明治製菓と明治乳業が)統合した目的の1つに海外事業展開がある。まだ具体的なものはないが、シナジーを出すべく検討している。その際、アジア地域中心(という方向性)が基本となろう。将来的には海外売上高比率を20%程度にまで高めたい」(同)という。
5日現在の信用売り残は10万株強と厚みに欠けるが、取組倍率は0・91倍。需給面での安心感はある。
また、大塚HDの絡みでは、直近上場した医薬品メーカーとして、09年に上場した大幸薬品(4574・2部)も"参考銘柄恩恵"を念頭に入れておきたい。(日本証券新聞)
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